2025/05/21年次有給休暇の時季変更権の限界
社会法研究会
坪内友哉

年次有給休暇の時季変更権の限界について、以下の裁判例を中心に研究会を開催しました。
①警和会事件・大阪地判令和6年3月27日・労判1310号6頁
②京王プラザホテル札幌事件・札幌地判令和5年12月22日・労判1311号26頁、札幌高判令和6年9月13日・労判1323号14頁
発表者からは、警和会事件判決は、病院の事業譲渡に伴う退職を控えた中で多数の職員が一斉に時季指定を行ったという特殊性があるものの、退職までの予定就労日数が有給休暇の日数を下回っておりそのために時季変更をしようにも変更できる候補日がないという事案において、「他の時季に年休取得の可能性がない場合には時季変更権の行使はできない」を原則としつつも、事業の存続が危殆に瀕するような業務の重大な支障があるような場合には例外的に時季変更権を認めたものとして、重要な意義を有するとの研究発表がなされました。
また、京王プラザホテル札幌事件控訴審判決は、コロナ禍かつ労働者が利用目的を明示していたという事案の特殊性があるものの、有給休暇の利用目的を加味して行使された時季変更権の有効性について年休の自由利用を念頭に消極の結論を出す裁判例が続く中で、有給休暇の利用目的(に不可避に伴う客観事情の発生)を防止するための使用者の時季変更権行使を有効とした実例として重要な意義があるとの研究発表がなされました。